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中国の覇権主義の手は南太平洋に

 中国の太平洋島嶼国への進出はとどまる所を知らない。かねてから中国は台湾と国交を有する島嶼国の切り崩しを行ってきたが、最近では、2019年9月、 中国は台湾と国交を有していたソロモン諸島の切り崩しに成功、次いで、同年、キリバスとも国交を結んだ。

特に、ソロモン諸島との間では、2022年4月19日から20日にかけて中国軍駐留や艦船の寄港、警察の派遣を可能とする安保協定を締結(内容非公表)した。更にキリバスとも安保協定を結ぶ計画がある由(英紙ファイナンシャルタイムズ)これに対し、米、豪、NZ そして日本は、これは「自由で開かれたインド太平洋」弐とって、深刻なリスクと認識し、中国による事実上の軍事拠点化につながると強く反発。これに対し、中国は「色々言われてる事は間違った情報に基づいている。ソロモン弐軍事基地を作る意図はない」と反論。ソロモン側も「安保協定は国内の暴動鎮圧等のためで、基地建設の意志はなく、中国からもかかる提案はない」と言ってる。(コメント:この協定が非公表である以上、これ等発言を額面通りは受け取れない)。更に、バヌアツでは、中国は潜水艦基地の建設を進めているとの情報もある。

以上の動きを踏まえ、4月19日、米国安全保障会議が、ハワイにおいて開かれ、米、日本、豪、NZ政府関係者は、ソロモンと中国の間で署名された安保協定に対する懸念を共有。4月22日には米国キャンベル・インド太平洋調整官が、ソロモンに飛び、同国首相に対し強い懸念を表明。4月26日には、日本の上杉外務政務官が、ソロモンを訪問し同国首相に同じく懸念を伝えた。林外相もフィジー、パラオに飛び、この安保協定に対する懸念を表明した。

ところが、驚いたことに、5月26日、中国の王毅外相は、ソロモン諸島等中国の国交を持つ南太平洋7ケ国(キリバス、サモア、フィジー、トンガ、バヌアツ、パプアニューギニア、東チモール)を順次訪問。多国間経済・安保協定を結ぶことにより一挙に影響力強化を図る挙に出た。そのため、5月30日、王毅外相は、フィジーにおいて地域10ケ国の外相を集め、安保面での連携強化を提案したが、ミクロネシアが警鐘を発し、サモアが懸念を表明したことにより、中国のこの提案は合意に至らなかった。   これに先んじ、危機感を持った豪のフォン外相はフィジーに駆け付け、島嶼国への支援を約束に、中国の出鼻を挫いた。

以上のような中国の動きの背景には、2008年当時、驚くべきことに、中國が米国に対し提案し、米が断ったと言われる「中国がハワイ以西、米国がハワイ以東を管理する太平洋分割」を実現するという信じられないような野心があると見られている。

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